午前9時30分…ざわざわざわざわ…
コツコツコツ…バタンッ!!
ドンドンッ!皆さん!静粛に!
え〜只今より、当『大阪ボルチモア道徳訂正裁判』第一回目を開催致しますっ!
では、まず裁判長の御挨拶から。 どーぞ!
ハイ。アタクシ、出羽院 正子、と申しますっ!で・ば・い・ん ま・さ・こ、で、ございますっ!
と…当裁判の裁判長を勤めさせていただきます、…現57才になる一独身未亡人、元主婦、大今里大婦人会副会長でございますっ!
え〜、何故アタクシがこういう事をヤっておりますかと申し上げますとですね、
ココ、大阪、特にアタクシが住んでおります鶴橋、今里地区と、とても良く似た街に行った事がありまして、
え〜、アメリカのボルチモアという所なんですが、そうですね、ニューヨークから夜行電車で5、6時間くらいだったでしょうか、
良く覚えてませんけど、あるきっかけがありまして、それも言えませんけれど、とにかくそのボルチモアっていうとこに行ったんでございます! で、え〜、あの、まず駅をおりましたらそれはそれは大きな看板に『ようこそ!ボルチモアへ!このチャーム・シティーへ!」
などと書いてありまして、まぁ素敵!で、あちらこちら回らせていただきまして思いましたのが、
まず特徴として、みなさんとってもなごやかで、家庭的、どこのお宅にも必ずちょっとしたお花であるとか、
動物や生き物の人形などが飾ってあり、どなたもニコニコされていて、
その上まるでアタクシのようなふっくらとした立派な体型の見るからに栄養満点な方が多く、
なにかこう、心がまぁるくなってくるようななごやかな所なんでございます。
そして何よりの特徴がみなさん、これまた アタクシと同じく髪型に大変凝ってらっしゃいまして、
特に年輩の方々のヘヤースタイルといったら雲をも突き抜ける程おおきなおおきな、
それはそれはそれぞれに工夫を凝らしたお洒落っぷりで、多分アタクシが思いますのに、
あすこは世界一カツラの普及率の高い街だと思います。
そしてお洋服も皆さん手抜きがありません!とってもお洒落でらっしゃいます!
皆さんシンプルながらも色鮮やかな必ず柄物のワンピース、無地の地味なお洋服の方などおられません!
生地はもちろんポリエステル。とても進歩的だなぁ〜と思い、感心しました。
老若男女問わず、みなさんお化粧もバッチリです。
みなさんしっかりと白粉を塗られ、口紅は赤かピンク。頬紅も赤かピンク。アイラインや付け睫も必ず。
ね、お洒落でしょう!で、不思議な事に、みなさんビニールのスーパーの袋をお持ちなんですね。流行かしら…。
まぁそこで思いましたのが、コレってまぁまるで大阪じゃああ〜りませんの!
と思いましたのアタクシ!まるで我が故郷にタイムストリップしたような気分になりまして、
思わずその気になったアタクシには、ちょっとした素敵な男性とのアバンチュールもあり、
それはそれは楽しい、思いで深い街なのであります。 え〜話しが長くなりましたが、
…ちょっと!そこの貴方!そこの金髪の奥さん!いびきかいて寝ないでくださいっ!大事なお話はこれからなんでございますから。…
で、え〜、ですね、こちらに帰国して来ましてからですね、そのボルチモアでの楽しい思いで話しをすると、
妙にビクビクなさる方が多い事に気付きましたのであります。
中にはボルチモアって言うだけで走って逃げて行く方や、不思議な事にゲラゲラ笑いが止まらなくなる方やらが多いんでございます。
…一体どうして?アタクシの口紅でもはみだしているのかしら?それともこのカツラがずれてでもいるのかしら?
それともこのビニール袋?と気を病んで、とうとうアタクシ、ある日みなさんに気狂い扱いされまして、
精神病院送りになりましたのアタクシ!
…すると、ナント病院の中でも『ボルチモア』って聞くだけで発作を起こされる方や、
まるでカニのように口から泡を吹かれたやそれが気管につまり、死亡された方まで出てしまったのです!
アタクシのこのたった一言、『ボルチモア』のお陰で!
なのでアタクシは『ボルチモア…ボルチモア…なぜ〜っ!?』って叫んでおりますと、
突然ある若者がアタクシを見て、「うわぁ!シリアル・ママだ、それ〜!!」って言って逃げて行ったんです。
そこでアタクシはその若者が塀を超えて逃げようとする脚をつかんで引っ張り落として「なあに?それ?」って 問い詰めたところ、
最近『シリアル・ママ』っていう殺人ママの映画を作ったカントクがいて、
その人の映画は舞台が全部ボルチモアで気狂いばっかりが出てくる…ああオバサン恐い〜!許して〜!
と叫びながら逃げていったので、アタクシは一目散に主治医のセンセの所に行ってその話しをしたところ、
実はその『ボルチモア』っていうのはココでは禁句で、
その人の作った映画のおかげでおかしくなった人が沢山入院していると聞き、
夜中コッソリと病院を抜け出して近所のビデオ屋さんに行き、受付けのお兄さんにそのカントクの名前を告げ、
ビデオを全部持って来ていただき、病室でこれまたコッソリと夜中に全部見ました。
アタクシは…アタクシは…(泣き出す)…ええええ、あそこは実にホントにアタクシのボルチモア。
でも…でも…ああああああああああああああ〜〜〜(カツラをかき乱し叫ぶ)!!
アタクシの、あのボルチモアでの素敵な思い出はどうなるの!?
…そ、それに!ココのあれらの映画の被害者さん達、あれらの映画を見て人生踏み外した貴方方!のために!
ココに、その映画を作った憎っくきオトコを裁く、『大阪ボルチモア道徳訂正裁判』を行う事に決定いたしました!!
そして被告はこのオトコ!憎っくきその名は、ジョン・ウオーターズであります!!珍さん!スライド、オ〜ンッ!!
…ちょっと!そこのさっきからガーガー寝てるパツキンババァ!(走って行く)イビキかくな〜!!…ドスッ!…(殴り倒す音)。
第一回裁判へと、つづく。